【蔵見学録_06】『川の流れの如く——“自然体の哲学”に学ぶ』【墨廼江酒造様】
こんにちは。日本酒を愛し、日本酒に愛された男、佐々木一慶です。
日本酒の沼にはまり続け、気づけば「J.S.A. SAKE DIPLOMA(日本酒ディプロマ)」まで取得してしまいました。日々酒蔵巡りをしながら学びをお客様への提供や店舗運営に反映させています。

今回訪問させていただいたのは、宮城県石巻市にある1845年創業の墨廼江酒造さんです!
訪問前日がちょうど甑(こしき)倒し(今期の酒造り終了を指す)が行われたばかりという造りの節目のタイミングでもあったためか、蔵元兼製造責任者の澤口様が直接ご案内していただき実際に酒造りの指揮を執る方からお話を聞けるという、とても貴重な機会でした😄
今回は第6回目のレポートです!過去アーカイブはこちらから!
震災と再出発の話
2011年の東日本大震災では蔵が半壊し、位置的に川から水が逆流してしまったことで酒蔵内は汚泥で覆われたとのこと。泥かきだけで半年以上かかったそうです・・・。

そんな過酷な状況下でも、瓶貯蔵にこだわっていたおかげで多くのお酒が無事だったことが、再出発の希望に繋がったとのことでした。
※他にタンク貯蔵というのがあって、やり方にもよるので一概には言えないが、基本瓶貯蔵の方が保管や管理が大変な分、高品質を保ちやすい
「最初に注文が入ったときが、一番活気を取り戻せた瞬間だった」と語っていたのが印象的でした。
東北の酒を注文するきっかけをくれた南部美人の蔵元さんへの感謝や、伯楽星、あたごのまつの蔵元さんに支援をしてもらったという素敵な美談も聞かせてくださいました。
震災で季節労働者の確保が難しくなったことを機に、若い人材を地元から育てていくという方向にシフトしたことも、この酒蔵の未来を左右する大きな転換点だったみたいです🤔
酒造りの体制や環境

蔵は現在8名体制でそのうち5名は新卒採用の地元出身者ということで、震災をきっかけに生まれた若手育成の方針が根付いてきてる印象です。
当日はフレッシュな未成年の方を呼んでご紹介もしてくれました😄
今年の酒米は全国的な高温障害の影響を受け、解けにくく、歩留まりも悪いとのこと。
それに対応するために、「仕込み水を多めに、麹も多めに」という調整で解決しているというリアルな工夫も教えていただきました。
仕込みは10月から4月の昔ながらの寒造りで、その期間の休みは少なめ、
その代わり昔のような泊まり込みや長時間の造りではなく、今の時代に合った働き方にシフトしているのが印象的でした。
墨廼江さんらしさがにじむ酒造り

年間製造量は約1,000石(1升瓶で約10万本)、この量はやや小規模といった量。特定名称酒のみ、そのうち7割が純米系という品質重視のラインナップ。
飲食店向けの出荷がほとんどで、個人向け出荷は少ないとのことでした。
蔵元さん自身が製造責任者となってから18年。
当時は蔵元が直接酒造りを手掛けること自体が珍しかった時代ですが、山形の「十四代」からの影響、刺激を受けたという話もありました。
かつては9号酵母を使用していたそうですが、現在は宮城酵母をメインに、
近年ではまた協会酵母も少しずつ試しているとのこと。
「流行りを追うのではなく、酒質を絞っていく」という方向性で、酒のスタイルとしては「飲み疲れしない日常酒」をテーマに特に和食との相性を重視。
酒蔵のある石巻市は“世界三大漁場”と呼ばれることもあるほどの魚の町らしいので、「肉より魚」とはっきりおっしゃっていたのが印象的でした😄
日常酒の真価に触れるテイスティング
蔵見学の後は澤口様と一緒にランチをご一緒させていただき、
完成したばかりの特別純米 甕口取りをその場で振る舞っていただくという超贅沢な時間!

造りたてのボディのしっかりした味わいかつ墨廼江らしい穏やかでキレのある酒質が存分に表れていました。
これからの挑戦
現在は少しずつ海外市場へのアプローチを進めているとのこと。
現地イベントでドカンとプロモーションするというよりは、コツコツと飲食店を回って着実にファンを増やしていくらしいです。販路拡大にも墨廼江さんらしさを感じました。
加えて話の中で、「ウチはマーケットインよりプロダクトアウトで考えてる」とはっきりとおっしゃってましたんで、少なくても本当にハマってくれるファンが増えていくのが望ましいと考えているようです😄
最後に
今回の訪問を通じて、
地に足をつけた着実な方針こそが、墨廼江さんの強みだと深く実感しました。
希少性やストーリー性が注目されがちな日本酒の世界ですが、
墨廼江さんのように「日常的な酒の中にある本質的な価値」を大切にしつつ、少しずつ歩みを進めている蔵があるということをもっと多くの人に知ってもらいたいなと思います😄
お話の中で、
安売りをしているように思われる日本酒原価酒蔵についてどう思うか?
あえてこういった聞き方で質問してみましたが、
「とにかく、たくさんの方に飲んでもらえるのがありがたい」
ということなので、たくさんの方に飲んで知ってもらえればとのことでしたので、
我々がしっかり届けていけるようにしたいですね!